『昔日』

 私の生家は美濃街道に面しており、戦争未亡人となった
祖母が布団屋をしていた。夏になると、祖母は道に椅子を
出し、アッパッパの胸元に団扇で風を送りながら、夕涼み
をしていた。道行く人々が祖母に声をかけ、あるいは立ち
話をし、そうして、夏の夕は暮れていった。
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